
サバティカルとは、元々は大学教員や研究者等のアカデミックが継続して数年勤務した場合に取得できる半年から1年程度の研究休暇を意味していた。大抵は他の大学に研究員として滞在し、教務や雑用から解放され、集中して研究を行い、研究実績を積み上げることに使われる。サバティカル「研修」と呼ばれることが多く、研究業務の一環として給与は支払われることが多い。サバティカルは日本、海外を問わず多くの国の大学で取り入れられている制度である。
僕はイギリス駐在中、長期にわたりロンドン大学に席を置いて産学連携の仕事をしていた。その時も、ロンドン大学の先生がサバティカルで長期に不在で、メールの返事がオーストラリアから来たり、日本からサバティカルで来られている大学の先生方と知り合いになったりということもあった。
欧州の企業では数年間勤続した従業員に対するインセンティブとして長期休暇を与える、サバティカル「休暇」を取り入れている企業は多い。企業の場合は研修ではなく休暇であって、目的を問わない場合が多い。給与は支払われたり、無給だったり、手当が出たりと企業により様々である。
サバティカル休暇は、近年は日本の民間企業にも導入されつつある。事例としてはヤフー株式会社の「サバティカル制度」、株式会社リクルートテクノロジーズの「STEP休暇」、ソニー株式会社の「フレキシブルキャリア休職制度」等がある。休養をとってリフレッシュする、普段できない長期の旅行、自己研鑽を行いキャリアアップにつなげるなど、従業員へのインセンティブとなるとともに、離職を防ぐのにも役立つ。
僕が以前勤めていたイギリスのハイテク会社にもサバティカル休暇制度はあって、4年勤めると4週間休めるというものであった。これは目的はまったく限定されておらず、純粋な長期休暇として利用されていた。ハイテク企業は世界中から人材を集めているから、長期帰省に使っている人が多かったように思う。僕も取ってはみたかったが、残念ながらその会社は4年続かずに転職してしまった。

イギリスの大学は研究レベルが高く、英語圏なので言葉の問題が少なく英語の勉強にもなるし、欧州各地への旅行の起点としても便利なことから、サバティカルの行き先として人気がある。
以前、イギリスでサバティカルを行う方の渡英のサポートの仕事をしたことがある。一人は国立研究開発法人の研究者、もう一人は日本の大学教授である。我々としては、研究内容のマッチングを行って滞在先の選択とプレースメントのサポートをするつもりであったが、二人とも研究連携ができそうな相手先はすでに自分で選ばれていた。
一人の方は相手先にメールを送っているのだが返事が全然来ないのでもうほとんど諦めた状態で我々のところにサポートを依頼してきた。我々は、とりあえずメールが届いていて、読んでいるのか、を聞くつもりで相手先の大学へ電話をしてみた。本人は不在だったが、同僚の方とお話ができて、本人はしばらく病欠をしているが次週から出勤してくる、出勤してきたら早急に手配をしますということであった。その後は話はトントン拍子に進み、問題なくイギリスでのサバティカルをスタートさせることができた。サービスといっても、電話一本をしただけだが、本当に喜んでいただけた。
もう一人の方は、家族を帯同する予定で、生活のことやVISAのことなどが不安だということで、住宅のことや学校のことなど、色々な情報を調査して提供したり、必要書類を取得するお手伝いをしたりした。この方も、問題なくイギリスでのサバティカルを開始し、渡英後も時々メールのやり取りをしていたが、同じ英国内でも場所が離れていたので残念ながら直接お会いすることはできなかった。
これらの経験で学んだことは、困っていることは本当に人それぞれであるということである。一応標準的なサポートコースは用意していたが、実際の要求はそれとは離れたもので、それらをよく聞いてカスタマイズされたサービスを提供することになった。サバティカルの滞在先を探すと言うコアの部分はプロの研究者だから自分で問題なくできるけれども、その周辺のことは経験がなく、むしろそちらの領域で現地に詳しい我々のサポートを利用していただいた。
我々「イギリスで働く」の提供するサービスも、お客様ごとに要求をお聞きしてカスタマイズしてご提供するものである。例えば、相手先との連絡が取れないので電話をしてほしい、などと言うご要望は、スポットコンサルティングの範囲でサポートできる。サバティカルに関しても、アカデミック、企業を問わず、我々のサービスを活用していただきたい。