本当にイギリスには年齢差別はないのか?

イギリスで働いていて心地よいことの一つに、年齢差別がないということがある。イギリスには年齢差別禁止法、のちに他の差別禁止法と統合されて2010年に制定された「平等法」という法律で差別が禁止されている。こういう法律があるということは、裏を返せば年齢差別は存在していて、それが問題になっていたということになるのだろう。

さて、それでは僕が実際にイギリスで働いている実感として、年齢差別はあるのだろうか?というのが本記事のテーマである。

英文履歴書(CV)は日本の履歴書と異なり、フォーマットはない。したがって、年齢や性別は記載しない。面接で年齢を聞くことは法律違反だから聞かれることはない。そもそも人材募集に年齢制限の条件をつけることは禁止されている。

イギリスでの転職の過程で唯一年齢を聞かれるのは、CVと別途人事に出すアンケート的な書類で、そこには生年月日、性別、国籍などを記載する。言いたくなければ、”prefer not to say”という選択肢もあって言うことが必須ではない。この目的は、その会社が年齢差別をはじめとする差別をしていませんよということを証明するために統計的に使われるのと、採用になった場合には、税金と年金の事務処理に使われる。この個人情報が採否を決定する部門の方に知らされることはない。

日常の仕事の場面でも年齢を聞かれたことは一回もない。たまに自虐的に「俺は年寄りだからこういう細かい仕事はやってよ」みたいに半分ジョークとして使うようなことはあるが、自分で言わない限りは年齢はわからない。同僚の年齢もわからない。

それでは、イギリスでの転職では年齢そのものは開示されないにしても、年代のようなものは考慮されないのだろうか?

これに関しては、インフォーマルに誰かに聞いたことがあって、年齢はわからないけれども、大学を卒業した年や、職歴を見ればだいたい想像はつく。もちろん、大学だって社会人入学等もあるからみんなが同じ歳ということはないが、そう大きくは外れない。それから、採用する場合には、理想の人材の概略のスペックがあって、年齢で分けるのではなく、そのスペックを満たしそうかどうかで判断すると言う。例えば、肉体的に若くないと務まらない仕事だったり、交渉のマネージャで迫力とか貫禄とか「年の功」が必要な仕事だったり、だいたい年代と紐づいている要素があれば、イメージでマッチングをとることになる。

今の職場で色々なチームと仕事をしているが、ほとんどの場合においては僕が最年長だと思われる。だが、それで疎外感や違和感を感じることはない。日本にいると年下のマネージャに対して、お互い気を使ったりすることがあったが、ここではそういう年齢に関するストレスは皆無である。

定年間近になって転職を考えて探し出した時には、日本のリクルートエージェントにも相談したが、可能性はほとんどゼロに近いと言われていた。日本で働いていた時の最後の数年間悩まされていた、差別とは言わないまでも、年齢に関連した様々なストレスから解放されたのはイギリスで転職してとても良かったことだと感じている。

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